個人ー外交的保護


国際違法行為に対する国家責任(A/RES/56/83) 2001年12月12日決議

第44条 請求の許容性

次の場合、国家責任は追求されない。
(a)請求が、請求国籍に関係する適用可能な規則に従い、提起されない場合。
(b)請求が国内救済完了の規則が適用されるものであり、且つ、すべての利用可能及び有効な国内救済が完了していない場合。

 

国籍法の抵触におけるある種の問題に関する条約(抄) 1930年4月12日署名 1937年7月1日発効

第1条 (国民の範囲の決定)

何人が自国民であるかを自国の法令によって決定することは、各国の権限に属する。当該法令は、国際条約、国際慣習及び国籍に関する一般的に認められた法の原則に従い、他国により承認されなければならない。

第2条(国籍の準拠法)

個人がある国家の国籍を有するかどうかに関するすべての問題は、その国家の法令に従い決定する。

第3条(重国籍者に対する所属国の取扱)

本条約の規定を留保し、複数の国籍を有する個人は、保持する国籍の所属国のそれぞれが自国民と認めることができる。

第4条(重国籍と外交的保護)

ある国家は、自国民がひとしく国民として所属している他国に対抗して、その自国民のために外交的保護を行使することができない。

第5条(重国籍者に対する第三国の取扱)

第三国では、複数の国籍を有する個人は、一つの国籍のみを有するものとして待遇される。第三国は、身分に関して自国で適用する法の規則を害することなく且つ実施中の条約を留保して、その領域内では、当該個人が有する国籍のうち当該個人が常住的で主要な居住有する国家の国籍、又は、事情に照らし、当該個人に事実上最も関係が深いと認められる国籍のみを認めることができる。

第6条(重国籍者による国籍の放棄)

ある国家がその国籍を放棄する一層大きな権能を与えるという権利を留保して、意思表示なしに取得した複数の国籍を有する個人は、放棄しようとする国籍国の許可を得て、国籍の一つを放棄することができる。
当該許可は、外国に常住的で主要な居住を有する個人に対して拒否されてはならない。但し、当該個人が放棄しようとするこくさ帰国の法令により必要とされる条件が、満たされるものとする。

第7条(国籍離脱の許可)

国籍離脱の許可は法令により規定されたものである場合、許可の名義人が既に他の国籍を有する場合、又はそれ以外の場合には名義人が新たに国籍を取得するときから、許可を与えた国家の国籍の喪失をもたらすものとする。
国籍離脱の許可は、名義人が許可を与えた国家の定める期間内に新たな国籍を取得しなかったときは、効力を失う。この規定は、許可を当該個人に与える国家の国籍以外の国籍を、許可を受ける際に既に有する個人の場合には、適用されない。
国籍離脱の許可の名義人たる個人が取得した国籍の所属国は、許可を与えた国家に対し、その取得を通告しなければならない。

第14条(両親不明の子)

両親のいずれも知られない子は、出生国の国籍を有する。この親子関係が確証されるに至ったとき、子の国籍は、親子関係が知られている場合に適用すべき規則により決定される。
捨子は、反証があるまで、発見された国家の領域で生まれたものと推定される。

第15条(無国籍者、国籍不明者の子)

ある国家の国籍が当該国家の領域内における出生の結果として当然に取得されるものではないとき、国籍を有しないか又は国籍の知られない両親から当該国家で生まれた子は、当該国家の国籍を取得することができる。当該国家の法令は、その場合に当該国家の国籍を取得に課せられるべき条件を決定するものとする。

 

二重国籍の場合における軍事的義務に関する議定書 1930年4月12日署名 1937年5月25日発効

第1条(軍事的義務の免除と国籍)

複数の国家の国籍を有する個人で、その一国の領域に常に居住し且つその国家にもっとも緊密な関係を持つ者は、他国における軍事的義務をすべて免除される。
当該免除は、他国の国籍の喪失をもたらすものとする。

第2条(兵役の免除)

この議定書の第1条の規定を留保して、個人が複数の国籍を有し、且つ成年に達するときにその一国の国籍を放棄又は拒絶する権利を当該国の法令の規定に基づいて有する場合には、当該個人は未成年の間、その国家の兵役を免除される。

第3条(国籍喪失と軍事的義務)

一国の法律によりその国家の国籍を喪失し、且つ他の国籍を取得した個人は、国籍を喪失した国家において、軍事的義務を免除される。


はじめに〜国際法と国際人権法

 近年、国際人権法は、国際法から離れた位置づけがなされるようになってきて、一つの分野として確立しはじめている。国際人権法だけを専門に取り扱い、諸人権条約を世界的憲章であるかのように扱い、さらには、個人優位の解釈に合致しない場合には、違法だという主張をする学者も存在する。もちろん、そのような主張は政治的な意味では有益で、国家の人権解釈の発展を促すものであるといえる。しかし、国際人権法は国際法から派生した分野であり、国際人権法を正しく理解するうえでも、国際法における個人の扱い、個人の国際法主体性について、理解する必要があるだろう。

個人の国際法主体性

 伝統的には、国際法は国家間の法として存在し、国際法の主体は国家でしかなく、個人に法主体性を認めるものではなかった。しかし、第二次世界大戦後は国連憲章や世界人権宣言により、人権の意識が国際社会で重大なものとなり、個人の基本的人権を規定する国際法が作られるようになった。個人の国際交流が飛躍的に増大し、外国における基本的人権の保障が国際社会において重要な課題となってきたのである。

 ただし、個人の国際法上の法主体性は国家間の合意に基づいてはじめて認められ、あくまで、個人の地位は極めて限られたものになっている。また、国際法で規定された個人の権利義務をどのように実施していくかは各国の国内法にゆだねられており、従って、個人の国際法主体性は、国家と同等の国際法主体として位置づけることはできないのである。

 なお、国際法上の「個人」という言葉には、人間を指す「自然人」と企業のような「法人」の両者を含むものである。自然人はさらに、私人と公人に分けられる場合がある。

外交的保護

 外交的保護とは、外国で自国民が被害を受けた場合に、個人に代わり、国家が加害国の国家責任を追及し、個人を保護することをいう。通常、国家が国際法上の違法行為を行った場合、加害国には国家責任が生じ、被害国には加害国の国家責任を追及する権利が生じる。個人が権利主体となっている国際法に対する違法行為であった場合にも、この原則は変わらない。自国民への侵害行為は国籍国に対する国際法上の侵害であるというのが、外交的保護の基本的な考え方である。外交的保護にあたっては、次の2つの条件がある。

国籍継続の原則
直接の被害者たる個人が、侵害発生時から少なくとも請求国が、国家責任の追及をするまで、請求国の国籍を有していなければならない。これは、侵害発生後に、個人が、大国に国籍を変更し、権力的介入を行わせることを避けるためである。
国内救済完了の原則
請求国が請求資格を得るためには、直接の被害者たる個人が、加害国の国内で利用しうる裁判等のすべての救済措置を尽くしていなければならない。これは、個人対国家の争いが容易に国際紛争に転化されるのを防ぐためである。

 注意点として重要なのは、繰り返しであるが、外交的保護権があくまで、国家の権利であり、個人の権利ではないということである。また、外交的保護権は当事国間の外交政策を考慮して行使されるため、この権利を行使するか否かは各国の裁量に任せられており、必ずしも、国籍国による保護を受けられるかは確証はない。政治的な理由で、権利を行使しないという結論に達することもありうるのである。さらに、仮に外交的保護権が行使された場合でも、その賠償は国家に対して行われ、個人に対して行われるものでもないのであり、被害者の国籍国がその被害者に対して何らかの保障をするかどうかは別問題の話となる。

自然人の国籍

 国籍は、個人と国家を結びつける法的な絆の証であるといえる。個人は、外国で何らかの侵害を受け、十分の救済を得られない場合に、国籍国に対し保護を求めることができるという点で重要である。

国籍の付与、取得

 国家がいかなる自然人に国籍を与えるかは、その国家の自由裁量に委ねられている。自然人の国籍の付与に関しては、出生による付与と後天的な理由による付与の二つがある。

出生による付与

 国家は以下のどちらかの主義を原則として用いていたうえで、重国籍者や無国籍者を生み出すことを防ぐため、両主義を折合的に採用している。

血統主義
親がその国家の国民であるなら、子供にもその国籍を付与する(日本、独国など)。
出生地主義
子供がその国家の領土で生まれたのなら、その子供に国籍を付与する(米国、アルゼンチンなど)

後天的理由による付与

 後天的理由による付与の方法には、本人の帰化申請によるものや、国際結婚や養子縁組による国籍の付与などがある。また、領土の割譲、国家の合併、独立などに伴って、国籍を付与することもある。

国籍の離脱及び剥奪

 国籍の離脱については、基本的には、自然人の意思に基づき自由に離脱することができる。ただし、無国籍者になるのを防ぐため、離脱に際しては、新しい国籍を取得していることが条件となる。また、国籍の国家による剥奪は、無国籍者を作り出すものであることから、原則として認められない。在日朝鮮人問題もこの国籍の剥奪が絡んで起こったことである。

国籍に関する問題

 国籍付与に関して、国家の自由裁量に委ねられているため、同一個人が複数の国籍を持つ重国籍者になる場合や、逆に国籍を持たない無国籍者になる場合がある。このような国籍の抵触は、時に様々な問題を引き起こす。今日的に国際社会の中で、重国籍に関しては、常住的で主要な居住のある国家に対する真正結合関係を重視して、真正結合関係にある国家が基本的に保護するものとすることにより、重国籍を認める国があり、重国籍の不自由性は否定され始めている。しかし、無国籍者はどの国からも保護を受けられなくなってしまうなど、重大であり、仮に不法入国者の子どもである場合でも、無国籍者とされないようにすることが重要課題とされる。

法人の国籍

企業活動の国際化の進展により、法人の国籍も国際社会において重要になってきた。法人の国籍の決定も私人と同じく、各国の自由裁量に委ねられている。主な法人国籍の決定基準は以下の3つのものがある。

設立準拠法説
法人を設立したに当たって、基準とした法律の国家の国籍を持つとする説。
住所地説
法人の活動拠点となる事務所の住所地の国籍を持つとする説。
支配的株主の国籍国
法人の株主の中で、最も重要な株主の国籍を持つとする説。

法人の場合、設立する際に国籍国や準拠法を設定するのが通例であり、自然人に比べると法人の国籍に関する抵触が起こる可能性は低いといえる。

外国人の待遇

通商条約は、自国の国民が相手国の領域で経済活動に従事するために必要な待遇や権利義務の規定を相互に保障することを定めた条約である。通商条約においては、外国人の待遇について2種類の待遇が使用される。

内国民待遇
内外人平等主義の見地から、締約国が自国民と同様の権利を相手国国民に保障する。
最恵国待遇
もっとも優位にある第三国民に対する待遇よりも不利でない権利を相手国国民に保障する。植民地制度などが認められていない今日においては、内国民待遇よりも高い待遇とはならないといえる。

権利を付与する段階においては、上述の二つの待遇が選択されるが、外国人に対して認めた権利は、内外人平等主義に基づき、国家は自国民と同一の保護を与えられるものとされる。しかし、内外人平等主義の考え方は、先進国と発展途上国の間で、解釈の相違がある。

国内標準主義
外国人に対する待遇は自国民と対等な待遇が限度であって、国家は、国民に与える以上の保護を外国人に与える義務は負わないとする考え方である。発展途上国、社会主義国が支持する。
国際標準主義
外国人に与えられるべき保護は、国際的な最低限度の基準があり、文明国が通常自国民に与えている程度の保護をしなければならないとする考え方である。先進資本主義国が支持する。

第二次世界大戦以降の諸人権条約の発展途上国よりの規定や、発展途上国が先進国の言う国際標準主義をとった場合における内外人平等主義に対する矛盾から、現在は、国内標準主義は妥当であるといえる。

参考文献

history of update
ver.1.20 2004.02.17 corrected the errors and revised the contents.
ver.1.10 2004.01.10 added table of contents.
ver.1.00 2003.10.16 opened to the public.


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