条約の解釈


条約法に関するウィーン条約(抜粋) 1969年5月23日採択、1980年1月27日発効

第31条 解釈に関する一般規則

1. 条約は、文脈により且つその趣旨及び目的に照らして与えられえる用語の通常の意味に従い誠実に解釈するものとする。
2. 条約の解釈上、文脈というときは、条約文(前文及び付属書を含む)のほかに、次のものを含める。
(a) 条約の締結に関連して全ての当事国の間でされた条約の関係合意
(b) 条約の締結に関連して当事国の一又は二以上が作成した文章であって、条約の解釈についての当事国の合意を確立するもの
3 文脈とともに、次のものを考慮する。
(a) 条約の解釈又は適用につき当事国の間で後にされた合意
(b) 条約の適用につき後に生じた慣行であって、条約の解釈についての当事国の合意を確立するもの
(c) 当事国の間の関係において、適用される国際法の関連規則
4 用語は、当事国がこれに特別の意味を与えることを意図していたと認められる場合には、当該特別の意味を有する。

第32条 解釈の補足的手段

前条の規定の適用により得られた意味を確認するため、又は、次の場合における意味を決定するため、解釈の補足的手段(特に、条約の準備作業及び解釈締結の際の事情)に依拠することができる。
(a) 前条の規定による解釈によっては意味が曖昧又は不明確である場合
(b) 前条の規定による解釈により明らかに常識に反した又は不合理な結果がもたらされる場合

第33条 二以上の言語により確定された条約の解釈

1. 条約について二以上の言語により確定がされた場合には、それぞれの言語による条約文が等しく権威を有する。ただし、相違があるときは特定の言語による条約文によることを条約が定めている場合又はこのことについて当事国が合意する場合は、この限りではない。
2. 条約文の確定にかかる言語以外の言語による条約文は、条約に定めがある場合又は当事国が合意する場合にのみ、正文とみなされる。
3 条約の用語は、各正文において同一の意味を有すると推定される。


条約の解釈権者

解釈権は、一義的には当事国が有する。紛争の際には、両国の付託や勧告的意見の要請に対して、ICJなどが判断を下す。

解釈に関する三つの方法論

一般に、解釈には客観的解釈・目的論的解釈・主観的解釈がある。

客観的解釈
表示される文言に忠実に解釈を行う。解釈は、一義的にはこれによってのみ行われなければならない。ここにおいては、目的はほとんど考慮されない。
目的論的解釈
法律文書に示された目的から、類推解釈を加える。この考え方は、客観的解釈によって、曖昧さが現れるときに、一方の正当化事由として使われることが多い。また、政策論的に辻褄合わせにも使われる。実際の解釈に際しては、下記の主観的解釈よりも優先される。
主観的解釈
解釈者の主観という意味ではなく、立法者が意図したことなどを、当時の状況や残っている文書から判断する類推的解釈。要は、立法論的立場である。

客観的解釈

条約の原文中に用いられた用語の自然かつ通常の意味から、当事者の意思を求める解釈
→当事者の意思は原文それ自体の中に存在するとの考え方である。

 用語の自然かつ通常の意味だけで、意思の探求が不可能な場合、原文起草の際に採用された言語、語彙、文法、文脈などの探求のほか、論理的帰結(文脈から類推解釈、実効性の原則による拡大・制限解釈)などにも依拠することとなる。

目的論的解釈

条約の目的や事後の慣行を考慮に入れ、当事者の意思を求める解釈

 条約の最初の目的の探究、当事者の締結後の態度・慣行の探求、文脈外からの類推解釈、などの方法をとる。 (当事者の意思を越えて、新しい立法的性格を有することが考えられるということからの批判には、紛争が起こった際のいかなる条約の解釈の際にも、政策的配慮を考慮に入れないことは不可能であることから両立するとの意見がある。)

主観的解釈

条約の文言に基づく条約当事国の共通の意思を求める解釈
→実定法主義の立場からすれば、最も正しい方法であるといえる。

 主観的方法の本質的要素として、意思の探究に伴う、準備交渉の方法(予備的文書、外交書簡、議定書、追加議定書、議事録、国会での発言・声明など)に依拠することとなる。補助的手段としての準備交渉の採用は、当事国の真の意思を発見し、原文の曖昧さを解明するための実質的要素とされる。

三つの方法論の関係

 解釈の出発点は、条約の正文であり、客観的解釈が最優先される。条約締結の際の準備的書類を正文よりも重要視してはならず、成分がそれ自身で明白でないときに限って、補充的に考慮すべきことがICJにより、繰り返し述べられている。
ex. 「ローチェス号事件」(1927);「ダニューブ川ヨーロッパ委員会の権能に関する事件」(1932)意見;「国家の国際連合加盟を承認する場合の総会の権限」(1950)勧告的意見.

 また、目的論的解釈は、客観的解釈及び主観的解釈の両方において、考慮材料として検討される。

条約法条約の検討

第31条1項

  1. 「意味は条約全体の文脈により」
    ex. 「農業労働を規制するILOの権限事件」(1922);「ダンチッヒにおけるポーランドの郵便事務の事件」(1925);「自由地帯事件」(1932);「国家の国際連合加盟を承認する場合の総会の権限」(1950)勧告的意見.
  2. 「条約の趣旨及び目的に照らして明らかにされなければならない」
    ex. 「モロッコにおける米国民事件」(1952).
  3. 「条約締結時に有効であった一般国際法上の規則に照らして」
    ex. 「グリスバダルナ事件」.
  4. 「同時代の用語の意味に照らして」
    ex. 「モロッコにおける米国民事件」(1952).

 

第31条2項・3項(a)

 この規定の基礎にある原則は、一方的な文書ではなく、他の当事国によって受諾されたものでなければならない。これらの文書は、単なる証拠として、条約の不明な点を明らかにするために援用されるのではなく、文脈の一部として条約の意味を確定するために用いられる。

第31条3項(b)

 条約の適用上における慣行、つまり、条約を実際にどのように適用してきたかということは、条約の意義を当事国がどのように了解しているか客観的に示す証拠となる。それに従って、条約の意義を確定することはICJにより確立しているといえる。さらに、事後の慣行は条約の解釈だけでなく、実質的な変更を加える可能性も指摘されている。
ex. 「農業労働を規制するILOの権限事件」(1922);「コルフ海峡事件」(1949);「国連経費事件」(1962);「ナミビア事件」(1971).

 このような解釈方法は条約一般の解釈というよりも、国際機構の設立文書に限られる解釈方法だといわれる傾向があり、実際そのようなものに判例が多い。しかし、国際機構の設立文書にこのような解釈方法が多く見られるのは通常の条約よりも国家の意思表示や実行が明白であり、かつ、慣行として集積されやすいためであると考えるべきであり、条約当事国の意思を反映した慣行を考慮に入れるという点で、一般性のある方法なのである。

 ある条約に対する判例は、ICJに付託した当事国以外の国家に対しても、黙示的合意による慣行によるものとして、解釈に法的拘束力を与える。その場合、この規定によるものと言えるかもしれない。

第31条3項(c)

 当事国の間の関係において、適用される国際法の関連規則

第31条4項

 通常の意味で解釈されるのが原則であるが、特殊な意味に用いることがある。その場合は、特殊な意味に解釈する国家が証明しなければならない。
ex. 「東部グリーンランドの法的地位に関する事件」(1933)

第32条

 規定されている2つの場合にのみ、補助的解釈手段による解釈をすることができる。規定上は、条約の準備作業及び解釈締結の際の事情を主要なものとしてあげているが、これらだけに限らず、条約法条約で採用されなかった解釈手段(実効性の原則など)を利用することができるかもしれない。

第33条

 複数の言語で条約を起草しても、同一のことを合意するつもりであったに違いないのであり、複数の本文が食い違っていても、できるだけ調和させ、それらの共通な意味を発見するように努力しなければならない。この調和は共通となる部分だけの狭義の解釈とするのではなく、最もよく調和させる意味を採用すべきである。
ex. 「マブロマチス事件」(1924).

条約法条約上の解釈規則の性格

これらの条約法条約上の解釈規則については、「ナミビア事件(1971)」において、すでに慣習法化していることが確認され、条約法条約の当事国でなくとも拘束されることが述べられている。

参考文献

history of update
ver.1.20/2004.01.20 modified the contents.
ver.1.10/2004.01.10 added table of contents.
ver.1.00/2003.10.16 opened to the public.


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