国際犯罪に対する管轄権

国際犯罪

国際犯罪とは、国際的な犯罪をさす場合と、国際法上の犯罪をさす場合とがある。前者は、犯罪が複数国間にまたがる場合をいい、基本的に国内法が適用される。後者は、ある犯罪行為が国際法に違反する場合を言う。

管轄権の三つの作用

「管轄権」は最も一般的には、国家が人、財産又は事象に対して行使する権限を意味する。管轄権はさらにその作用により、3つに分けられる。

立法管轄権
国内立法に関する権限
司法管轄権
国内裁判所が、国内法令を適用して、事件を審理する権限
執行管轄権
行政府が行使する逮捕、差押などの物理的干渉により、国内法令を執行する権限

立法管轄権は、国際法による制限(制限自体も立法管轄権により承認されたものである)を除き、いかなる国内法令を立法するかは国内管轄事項として、国家裁量に委ねられている。

司法管轄権と執行管轄権は混同されることが多いが、国際犯罪の分野では、特に明確に区別する必要がある。国際犯罪の分野で、犯人が訴追される可能性を高めるという目的のもと、多くの国家が同事象に対して、司法管轄権を有する状態にしている。しかし、執行管轄権は、その対象(人、財産、事象)に対して、領域主権の及び国家のみが有する [1] 。また、対象に対して管轄権を有しているということと、それを行使できるかは別物であるともいえる。例えば、ある者が日本で殺人を犯して中国へ逃げた場合、日本警察は中国で直接犯人を逮捕することはできず、中国に対し犯人の拘束と引渡しを求めなければ、執行及び司法管轄権を行使することはできない。

管轄権行使の準則

属地主義
すべての国家は、外国人によるものも含め、自国領域内で行われた犯罪に対し管轄権を有するとの考え方。犯罪の着手国と完了国が異なる場合には、両国が管轄権を有する。属地主義は刑法一般に対してとられる。
属人主義(国籍主義)
属人主義はさらに積極的属人主義と消極的属人主義に分けられる。
積極的属人主義
いかなる国家で行われた犯罪であっても、自国民による自国刑法違反である場合には、管轄権を有するとの考え方である。積極的属人主義は反逆罪や殺人罪のような犯罪に対してとられることが多い。
消極的属人主義
国外で行われた自国民が被害者の犯罪に関し、犯した外国人に対し、管轄権を有するとの考え方である。アメリカやイギリスは、この原則に反対してきたが、アメリカは対外関係法第3リステイトメントで、テロ活動に対するものとして受け入れるようになっている。
保護主義
外国人が国外で行われた犯罪であっても、国家の基本的利益に重大な侵害が発生する場合には、これを処罰する管轄権を有するとの考え方である。政府転覆の陰謀、スパイ、通貨偽造、及び移民規則を審判する陰謀のような国家の安全を損なう行為に対してとられる。
普遍主義
国外で外国人が行った犯罪に対して管轄権を有するとの考え方。国際法は、戦争犯罪、海賊行為、ハイジャック及び国際テロのような国際社会全体に脅威を与え且つすべての国家の犯罪となる重大な犯罪に対する管轄権を許容している。

普遍的管轄権

普遍的管轄権というとき、犯罪の重大性に鑑みて、司法及び執行管轄権を普遍的に行使できるという権利である。国際法上では、次の3段階で発展してきたが、未だ発展途上で問題が多いといえる。

普遍的管轄権は、領域主権の及ばない公海上で行われる海賊行為に対処するため、海賊行為を人類共通の敵として、すべての国家が司法及び執行管轄権を有するものとして扱われるようになったことから始まる。その後、奴隷貿易、戦争犯罪、ジェノサイド罪、人道に対する罪に対象が広がり、第二次世界大戦後には、国際軍事裁判という超国家的裁判所により個人が裁かれた。

60年代以降、ハイジャックなどのテロ行為が頻発し、各種条約により、領域内に犯人がいる場合には、訴追するか、他の管轄権保有国に引き渡すかの義務化がなされた。

90年代に入り、旧ユーゴスラビア及びルワンダ国際刑事裁判所、2002年7月1日に発効した常設国際刑事裁判所は、コアクライム(ジェノサイド罪、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略の罪)に対する普遍的管轄権を設定している。国際刑事裁判所は、国内裁判所を補完するものと規定されており、国内裁判所による普遍的管轄権にも注目が集まっている。近年国内裁判所においても、外国人による外国での重大な犯罪に対して、欠席裁判でも司法管轄権を行使する国家が出てきている。

しかし、司法管轄権の拡大はともかくとして、引渡しに関して、引渡し条約などが存在しない限り、引渡し義務は一切ないというのが現在の通説であり、また、普遍的管轄権行使の際に、強行に欠席裁判が行われることがあるが、被告人の権利が保たれないという問題がある。そのため、国際刑事裁判所や引渡しのための条約の当事国でない国家との間で、いかに真の普遍的管轄権を創設するかが課題であるといえる。

参考文献


[1] 例外として、国家が国外で自国法を執行した例があり、1960年のイスラエルによるアルゼンチンでのナチス犯罪人アイヒマンの誘拐、ニュージーランド港湾におけるフランス工作員によるレインボー・ウオリアー号の撃沈がそれに当たる。時として、その目的が人道的干渉である場合には許容されるとの説もあるが、一般的には領土保全及び内政不干渉の原則に違反する。

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ver.1.01 2004.02.19 added a link.
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