条約の留保


条約法条約(抜粋)

第2節 留保
第19条 留保の表明

いずれの国も、次の場合を除くほか、条約への署名、条約の批准、受諾若しくは承認または条約への加入に際し、留保を付することができる。
(a) 条約が当該留保を付することを禁止している場合
(b) 条約が、当該留保を含まない特定の留保のみを付することができる旨を定めている場合
(c) (a)及び(b)の場合以外の場合において、特定の留保が条約の趣旨及び目的と両立しないものであるとき

第20条 留保の受諾及び留保に対する異議

1 条約が明示的に認めている留保については、条約に別段の定めがない限り、他の締約国による受諾を要しない。
2 すべての当事国の間で条約を全体として適用することが条約に拘束されることについての各当事国の同意の不可欠の条件であることが、交渉国数が限定されていること並びに条約の趣旨及び目的から明らかである場合には、留保については、すべての当事国による受諾を要する。
3 条約が国際機関の設立文書である場合には、留保については、条約に別段の定めがない限り、当該国際機関の権限ある内部機関による受諾を要する。
4 1から3までの場合以外には、条約に別段の定めがない限り、
(a) 留保を付した国は、留保を受諾する他の締約国との間においては、条約がこれらの国の双方について効力を生じているときはその受諾のときに、条約がこれらの国の双方又は一方について効力を生じていないときは双方について効力を生ずるときに、条約の当事国関係に入る。
(b) 留保に対し他の締約国が異議を申し立てることにより、留保を付した国と当該他の締約国との間における条約の効力発生が妨げられることはない。ただし、当該他の締約国が別段の意思を明確に表明する場合は、この限りではない。
(c) 条約に拘束されることについての国の同意を表明する行為で留保を伴うものは他の締約国の少なくとも一が留保を受諾したときに有効となる。
5 2及び4の規定の適用上、条約に別段の定めがない限り、いずれかの国が留保の通告を受けたあと十二箇月の期間が満了する日又は条約に拘束されることについての同意を表明する日のいずれか遅い日までに、留保に対し異議を申し立てなかった場合には、留保は、当該国により受諾されたものとみなす。

第21条 留保及び留保に対する異議の法的効果

1 第19条、前条及び第23条に規定により他の当事国との関係において成立した留保は、
(a) 留保を付した国に関しては、当該他の当事国との関係において、留保にかかる条約の規定を留保の限度において変更する。
(b) 当該他の当事国に関しては、留保を付した国との関係において、留保にかかる条約の規定を留保の限度において変更する。
2 1に規定する留保は、留保を付した国以外の条約の当事国相互の間においては、条約の規定を変更しない。
3 留保に対し異議を申し立てた国が自国と留保を付した国との間において条約が効力を生ずることに反対しなかった場合には、留保にかかる規定は、これらの二の国の間において、留保の限度において適用がない。

第22条 留保の撤回及び留保に対する異議の撤回

1 留保は、条約に別段の定めがない限り、いつでも撤回することができるものとし、撤回については、留保を受諾した国の同意を要しない。
2 留保に対する異議は、条約に別段の定めがない限り、いつでも撤回することができる。
3 条約に別段の定めがある場合及び別段の合意がある場合を除くほか、
(a) 留保の撤回は、留保を付した国と他の締約国との関係において、当該他の締約国が当該撤回の通告を受領したときに効果を生ずる。
(b) 留保に対する異議の撤回は、留保を付した国が当該撤回通告を受領したときに効果を生ずる。

第23条 留保に関連する手続

1 留保、留保の明示的な受諾及び留保に対する異議は、書面によって表明しなければならず、また、締約国及び条約の当事国となる資格を有する他の国に通報しなければならない。
2 批准、受諾及び承認を条件として条約に署名するに際して付された留保は、留保を付した国により、条約に拘束されることについての同意を表明する際に、正式に確認されなければならない。この場合には,留保は,その確認の日に付されたものとみなす。
3 留保の確認前に行われた留保の明示的な受諾又は留保に対する異議の申し立てについては確認を要しない。
4 留保の撤回及び留保に対する異議の撤回は、書面によって行われなければならない。


留保の概要

 条約法条約第2条1項(d)によると、「留保とは、国が、条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除し又は変更することを意図して、条約への署名、条約の批准、受諾若しくは承認又は条約への加入の際に単独に行う声明(用いられる文言及び名称のいかんを問わない)をいう。」とされている。留保はできるだけ多くの国へ多数国間条約への参加を求めるために考案された制度であったとされる。ある条約への参加の予定されている国家が多種多様にわたる場合、各国とも多かれ少なかれ独特の風習ないし、国内法上の制約などの特殊事情を抱えており、それにより条約規定の一部分と抵触するためにその条約への参加が困難となることがある。そのような国が、特定条項の適用免除(または緩和)などを条件として条約参加を希望し、他の諸国がその特殊事情を認めてこれに同意を与えるならば、その国の参加が実現するようにするための制度なのである。

留保の沿革

 多数国間条約への留保が行われ始めたのは1880年代以後であり、当時の留保は各締約国によって了解されており、宣言は議事録に記録されたの当事国の受諾が推定され、留保というよりは条約の特定の規定の解釈という程度のものであった。1907年のハーグ平和会議においては、留保が有効に成立するためには、全当事国の同意が必要であるという原則が明確化された。具体的には、留保を条件として投票をし、署名を行う際に再度申し出て、批准によって他の当事国の同意が与えられるという形式がとられた。

 国際連盟の発足により、会議に参加していなかった国にも署名のために解放された条約に対して、署名・批准・加入に当たって各国が留保の宣言を行うようになり、1927年に国際連盟自身によって手続き(全当事国一致の原則)が明確化された。留保を希望する国はその旨を事務総量に通告し、事務総長は直ちにこの留保をすでに条約に批准・加入している国の政府に通知し、何らかの異議があるか否かを尋ね、一定期間内に反対がなかったときにはその留保が認められた。これを「条約の留保に関する連盟慣行」という。「テロリズムの防止および処罰に関する条約」(1937)第23条は連盟慣行を明示的に記載した条文といえる。

 ソ連など数カ国が、ジェノサイド条約に留保した問題で、1951年ICJは今日で言われる強行規範としての特殊性を考慮し、全当事国一致の減を区をこの条約に適用することを否定して「両立性の基準」を採用した。しかし、翌年総会は国際法委員会の一般報告書をもとに、条約の留保の一般的問題に関して、次のような勧告を採択した。「ICJの判決をジェノサイド条約に限定し、第一に、国際連合、専門機関及び各国に対して、留保の許容性・非許容性に関する規定及び留保の効果に関する規定を条約中に挿入することを考慮すべきこと。第二に、事務総長が日寄託者となる諸条約に関しては、条約流に留保規定がなく留保又は留保に対する反対が行われた場合、それらの法的効果に触れることなくその内容を全関係国に通知し、法的効果を引き出すことを関係国にゆだねること。」とし、「両立性の基準」否定したのだが、その後の国際法委員会の法典化の際には、「両立性の基準」が全面的に採用された。

条約の一体性と普遍性

 条約の問題を考えるときにまず問題となるのは、この問題である。条約の一体性とは、採決された条文本文はその基底層互換に緊密な関係にあり、諸規定は不可分のいったいとしてその条約を形作っているものであるから、その一部分のみを切り離すことは原則認められない、とするものである。それに対して、条約の普遍性とは、条約への参加国の範囲をできる限り広げることによって、その条約の実効性を高め、条約の目的達成を容易にしようとするために、留保などを認めることである。

 今日においては、条約の目的・性質・種類がきわめて多様なため、一体性と普遍性のどちらがより一般的であるかを論ずることは適当ではなく、ICJの判決による「両立性の基準」だけで足りるという考え方もあり、どちらを重視すべきかは条約中の留保や法的効果に関する規定を条約中に挿入することによって、間接的に規定しているようである。たとえば、人権条約の基となった人権宣言や環境分野の枠組み条約などは法的効果を排除することによって普遍性を重視したり、海洋法条約のように留保を一切禁止して一体性を重視したりしている。また、条約法条約によっても規定されているように国際機構の設立条文は一体性が重視されているといえる。

留保の有効性〜許容性学派と対抗力学派〜

 許容性学派とは、条約目的との両立性という許容性基準を重視し、たとえ締約国の中で異議を唱える国がないとしても、その基準に照らして非許容と判断されればその留保は無効とされるという主張である。一方、対抗力学派とは、ある留保が条約の目的と両立しないと考えられたとしても、締約国の中に黙示的にでもその留保を受諾している国がいる場合には、その留保の有効性は日的で機内する主張である。

 条約法条約は、「両立性の基準」を採用し、条約の目的と両立する留保を認める一方で、両立するかどうかの判断を締約国に委ねている。そのため、基本的に許容性学派の主張を重視しているようであるが、実際には対抗力学派の主張を重視する結果となっている。やはり、留保の両立性を的確に判断するには別の機関が必要となると考えられる。

人権条約の特殊性と留保

 通常の多数国間条約が当事国の相互的な権利義務を規定するのに対して、人権条約は、一般に、締約国とその管轄下にある個人との関係を規定するものであるとして、その特殊性が主張されている。ヨーロッパ人権裁判所は、1961年の判決の中で「ヨーロッパ人権条約の締約国が負っている義務は、基本的には締約国自身のために実態的かつ相互的権利を創設するよりも、むしろ、個人の基本的人権がいずれの締約国からも侵害されないようにするための客観的性格を有するものである」と述べ、米州人権裁判所も、1982年の勧告的意見の中で、「現代の人権条約一般、とりわけ米州人権条約は締約国間の相互的な利益による権利を保障するために締結された伝統的なタイプの多数国間条約ではない。人権条約の趣旨及び目的は、個々人の基本的権利を保護することである」と述べている。規約人権委員会が採択した「ジェネラル・コメント」の意見を整理すると「人権条約は個人への権利付与に関する条約であり、締約国間で相互的な権利義務を形成していない。その結果、他の締約国の義務履行及び他の締約国が表明した留保に関する関心が薄く、留保に対する異議も有効に機能していない。従って、条約法条約中の留保に対する異議に関する着ては人権条約にとって適切でない」となる。ただし、この特殊性を完全に肯定した場合、相互主義の原則が否定され、留保国に対してもその留保規定の法的義務の履行が要求されることとなる。

両立性の基準の判断者と留保の可分性の問題

 条約法条約が「両立性の基準」を採用しながら、その両立性の判断は各締約国に委ねていることから、条約の目的と両立し得ないと思われる留保に対して少数の異議が出されるもののその他の締約国が異議を表明しないため、そのような留保であっても事実上受け入れられてしまっているというのが実情であった。

 人権条約の特殊性との関連において、人権条約によって設置された条約実施機関又は履行監視機関がその権限を行使する中で留保の許容性を判定するケースが増えてきているという事実があるが、留保の許容性を判定する権限が条約実施機関に認められるものかどうか、認められるとすればどの程度の権限をそのような根拠で認められるかという問題がある。結果的にそれは、受諾・異議申し立てといった条約法条約の手続きの適用を排除する性質のものであるかどうか、また、人権条約実施機関がある留保について非許容の認定をした場合、そこからどのような法的効果を引き出すことができるのか、という問題にもなる。

 留保の可分性の問題とは、留保が非許容であるとの判定を受けたときにその判定を受けたその留保だけが無効となるのか、あるいは、条約への参加の同意そのものまでも無効となるのかというものである。一般的に見ると、条約に対する当事者合意の原則を考えると、合意をしていない義務を履行しなければならないのは不合理である。欧州人権裁判所はべリロス事件においては「一部の人権条約については、その留保のみが無効となって留保国は条約全体に拘束される」という見解がある。

解釈宣言と留保の区別の問題

 海洋法条約はこの条約に対しての留保を全面的に禁止した。しかし、次条において「特に当該国の法令をこの条約に調和させることを目的として、用いられる文書及び名称のいかんを問わず、宣言又は声明を行うことを排除しない」とし、広い解釈宣言を許容しているのである。同条但書きで「この条約の法的効果を排除し又は変更することを意味しない」と規定されて入るものの、留保の解釈宣言の違いには、著しい問題を生じさせるのである。

 解釈宣言とは、ある国が条約又はその一部を特別な方法において解釈することを求め、その特別な解釈によって条約上の義務を引き受ける宣言とされている。伝統的には、解釈宣言は留保の一部を構成すると考えられていた。国際法委員会が条約法の問題を取り上げ、解釈宣言と留保の区別の基準を条約の規定の適用上訴の法的効果を排除し又は変更することを意味する宣言であるか否かに設定した。しかし、その区別をする特別な機関があるわけではなく、やはり最終的に、その判断は他の締約国に委ねられてしまうのである。

 第三次海洋法会議では、海洋法条約が、留保を全面的に禁止し、解釈宣言の自由を認めるとした時、ある国が付した宣言が、解釈宣言か留保かの認定についての争いがある場合には、宣言国と利害関係にある国の異議申し立てを通じて、後日的にその紛争を裁判による解決に任せることで足りると考えていたようである。

 しかし、海洋法条約の署名・批准に当たって付された解釈宣言の問題は、第三次海洋法会議が、留保の代替物として生じつつあった解釈宣言への問題を考慮しなかったことによって、著しく困難な時代に直面することとなったといえる。ある宣言を条約上許容されない留保と見る国は宣言国の条約当事国としての地位を否認することもできるであろう。海洋法条約に付される解釈宣言への対応について、仮にこのような効用を認めるにしても、拡大された解釈宣言の普及とその解釈宣言であるとの断定を避けた異議による未決の事態とが、この条約について統一的解釈を損ない、ひいては特別な解釈による分裂した慣行の形成に拍車をかけることになる可能性もあるといえる。

参考文献

history of update
ver.1.20/2004.01.10 added table of contents.
ver.1.10/2003.10.16 opened to the public.
ver.1.00/2000.12.?? published for ILS.


今日: 昨日:
since 2008.09.13