国際責任ー国家責任

国際責任とは

 国際責任とは、国際法上違反である行為をした場合、負わなくてはならない責任のことをいう。この責任は、国家のみならず、国際機構や個人も、国際法上の義務違反に対しては責任を負う場合がある。本稿では国家の国際責任である国家責任について限定してみていく。

国家責任の成立要件

 国家責任が成立するためには、以下の二つの要件が必要となる。

  1. ある行為が国家に帰属すること、つまりは、国際義務違反がその国家の行為と見なされること。
  2. 国際義務違反の行為(作為または不作為を問わず)が存在すること、つまりは、ある行為が国際法上の義務に違反すること。

行為の国家への帰属

国家自体は人ではなく概念であるため、国家自身が行為を行うことはできない。行為を行うのは国家を代表した人である。そこで、いかなる人が行った行為が国家自身の行為と見なされるかが問題となる。

国家機関の作為
国家機関自体も概念であるが、行政府、立法府、司法府などを代表する者のことを表す。原則として、国家機関がその権限で行った行為が国家の行為と見なされる。国家機関がその権限を越えて行った行為であった場合にも、国家機関の行為として行った場合には国家の行為と見なされる。
私人の行為に対する国家機関の不作為
私人が私人の立場で行った行為は、原則として国家の行為とは見なされない。しかし、国家には領域内にいる外国人の権利を保護する義務を持っており、国家は私人による外国人への侵害を「相当な注意」をもって防止しなければならず、防止しない場合にはその私人の行為が国家の行為と見なされる。例えば、テヘラン事件。
新国家樹立前の内乱や暴動時の行為
反徒や反乱団体の行為は、原則として私人の行為と見なされ、鎮圧された場合にはあくまで、私人の行為として処理される。しかし、反徒や反乱団体が新国家を樹立した場合、反乱の始まった時期にさかのぼって、新国家の行為と見なされる。

国家責任と過失

 原則として、国家責任の成立には、行為が国家に帰属し、その行為が国際法義務違反を構成するという客観的判断基準のみによって生じるとされ、これを客観責任主義という。

 しかし、上述の外国人への侵害を「相当な注意」をもって防止しなければならない状況においては、そこに主観的判断基準である過失も成立の要件として考えられ、過失責任主義が適用される。

 また、科学・技術の発達に伴う「危険な国際活動」の分野では、その活動が国際法上で禁止されていない限りにおいて、当該活動と損害との間に因果関係があれば、それだけで国家の賠償責任を認めようとする無過失責任主義の考え方が適用される。例えば宇宙条約。

違法性阻却事由

 違法性阻却事由とは本来、違法な行為でも、特別な事情により、国際責任を問われない場合がある。ただし、違法性が阻却されても、金銭賠償の問題までは阻却されない。

同意
行為に対する相手国の有効な同意がある場合。行為が同意の範囲内で行われている場合。例えば、領空や内水の通過など。ただし、一般国際法の強行規範に違反する行為に関しては二国間の同意があるからといって阻却されない。
自衛
他国による違法な武力攻撃に対し、自衛のために武力行使を行うこと。
不可抗力
国際法違反であると知りながら避けることができなかった場合、または予測できなかった場合。援用国が状態の発生に寄与していない場合にのみ違法性が阻却される。例えば、荒天による他国の領空内の通過など。
遭難
国家の行為を行う者が、自己または保護を委託された者の生命を救うため、国際義務違反の措置しか取り柄なかった場合。援用国が状態の発生に寄与しておらず、より重大な危険を発生させないことが条件。例えば、悪天候による極度の危険から避難するための意識的な領空への進入など。
緊急事態
重大かつ差し迫った危険から基本的利益を守るために唯一の手段であり、かつ、他国や国際社会全体の利益を大きく損わない場合。
対抗措置
相手国の違反に対する復仇。条件として、平和的解決手段を事前に尽くしていること、相手国の違法に均衡することが必要。ただし、武力の行使は対抗措置としても禁止される。

国際責任の解除

 国家責任の意義は、加害国と被害国との間で、国際違法行為によって生じた損害を賠償することにある。また、違法行為を行った国家に制裁を加えることで、国際法秩序を維持することにあるという見方もある。国家責任を解除するためには、まず、未だ国際違法行為がなお継続している場合には、違法行為を停止する義務を負う。そして、違法行為により何らかの損害が発生している場合には、次の行為により国家責任を解除する義務を負う。

原状回復
違法がなければ存在していたであろう状態を回復するもので、国家責任解除の基本的な方法である。例えば、外国人の財産の返還や条約違反の国内法の改廃などがある。
金銭賠償
原状回復が不可能である場合、損害を金銭的に算定し、支払う方法である。金銭賠償では、直接損害のほか、損害と行為との間に明確な因果関係がある場合には、間接的損害も含み賠償されなければならない。
陳謝
口頭や書面による陳謝の意思表示、被害国国家への敬礼、責任者の処罰、違法行為再発防止への補償があたる。国家の名誉を傷つけるなどの精神的損害に対して行われる。政治的配慮による解決に使われることもある。

請求資格

 国家が違法行為を行った場合、加害国には国家責任が生じるのに対して、被害国には加害国の国家責任を追及する権利が生じる。しかし、私人が権利主体となっている国際法に対する違法行為であった場合でも、請求資格を有するのは原則として、国家のみなのである。そこで、被害を受けた私人に代わり、国家が加害国の国家責任を追及するのである。

しかし、それには、次の条件がある。

国籍継続の原則
直接の被害者たる私人が、侵害発生時から少なくとも請求国が、国家責任の追及をするまで、請求国の国籍を有していなければならない。これは、侵害発生後に、私人が、大国に国籍を変更し、権力的介入を行わせることを避けるためである。
国内救済完了の原則
請求国が請求資格を得るためには、直接の被害者たる私人が、加害国の国内で利用しうる裁判等のすべての救済措置を尽くしていなければならない。これは、詩人対国家の争いが容易に国際紛争に添加されるのを防ぐためである。

国際法委員会による国家責任条文草案

 1963年から、イタリアのアゴーを特別報告者として、「国家責任に関する国際法の法規則」の法典化を目指し、2001年に「国際違法行為に対する国家責任」条文草案が国連総会により採択された。国際法委員会の役割として、慣習法の法典化が挙げられていて、本条分草案の主要部分においては慣習法の成文化であるといえる。しかし、本条文草案は、結果として、国際法委員会のもう一つの役割である国際法の斬新的な発展の部分が重視されすぎ、学説の一つとしての価値しか持たないとの意見もある。しかし、国連総会で採決されたことの意義は大きく、これからの発展に大きな影響力を持つものであると考えられる。

参考文献

history of update
ver.1.10/2004.01.10 added table of contents.
ver.1.02/2003.12.07 modified, and crrected the errors.
ver.1.00/2003.10.16 opened to the public.


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