人類の平和と安全に対する罪法典案逐条解説第17条

第17条 ジェノサイド罪
ジェノサイド罪とは、国籍・民族・人種もしくは宗教的集団(全体もしくは一部に対して)をそのような集団として、破壊することを意図して行われた次の行為を意味する。
(a) 集団の構成員を殺すこと
(b) 集団の構成員に対して、重大な肉体的もしくは精神的危害を加えること
(c) 故意に、全体もしくは一部の物理的破壊を生じさせる生活状況を集団に課すこと
(d) 集団内の出生を妨げることを意図した手段を課すこと
(e) 集団の子供を強制的に他の集団に移すこと

Commentary

(1) ニュルンベルク憲章は、第6条c項中で、人道に対する罪の2つの明確な分類を規定した。非人道的な行為に対する人道に対する罪の第一の分類は、第18条に規定される。訴追に関する第二の分類は、ニュルンベルク以来の人道に対する罪に関する法の更なる発展を考慮して、本条文に規定される。

(2) ニュルンベルク憲章は、人道に対する罪の第二の分類を「裁判所の管轄権内のいかなる犯罪の実行もしくは関連性における政治的、人種的、宗教的迫害」とて、規定する。ニュルンベルク裁判所は、この類型を基本とした人道に対する罪の被告に有罪判決が下し、そのうえで、国際法上、そのような行為を犯罪として、個人の責任及び処罰することの原則が確認された(注115)。ニュルンベルク裁判所の判決の後、直ちに、国連総会は人道に対する罪もしくは「ジェノサイド(注116)」の類型の訴追は、国際法上の犯罪を構成することを確認した(注117)。国連総会は、後に、この憎むべき災難から人類を解放するために必要な国際協力を基本に規定されるジェノサイド犯罪を防止・処罰に関する条約の採択の歴史を通じて、ジェノサイドが、人道の多大な損害を引き起こしていることを認識した (注118)。

(3) 国連総会は、遅くても1946年に、ジェノサイド罪の極度の重大さを認識し、遅くとも1948年に、それらの防止や処罰に関する国際条約が起草された事実は、本条文中にジェノサイド罪を含むことが不可欠なものとされ、委員会の作業をも促進させた。ジェノサイド条約は国際社会に広く受け入れられており、圧倒的多数の国家に批准された。さらに、ジェノサイド条約の基本的原則は国際司法裁判所により、条約上の義務なしにでさえ、国家を拘束するものと認識されている(注119)。ジェノサイド条約第2条は、ニュルンベルク憲章に規定される人道に対する罪の訴追の分類に関する法の重大な更なる発展を象徴するジェノサイド罪の定義を内包する。必然的意図及び禁止された行為の用語の中で、ジェノサイド罪の正確な定義を規定する。ジェノサイド条約は、ジェノサイドが国際法上、平時もしくは戦時を問わず犯罪とされることを、第1条で確認をもしている。そのうえ、ジェノサイド条約は、「裁判所の管轄権内のいかなる犯罪の実行及び関連性の中での迫害」と規定されるニュルンベルク憲章中に含まれる平和に対する犯罪もしくは戦争犯罪との関連性の要件が含まれていない。ジェノサイド条約第2条に含まれるジェノサイドの定義(広く受け入れられ、一般的にジェノサイド罪の権威ある定義として認識される)は、本条文の第17条で再規定される。ジェノサイド条約の同じ規定は、旧ユーゴスラビア及びルワンダ国際刑事裁判諸規定にも再規定された。実際、ルワンダの悲惨な状況は、ジェノサイド罪が、たとえ一国の領域内で起こった場合でさえ、国際平和と安全に重大な結果を及ぼすことが明らかに証明され、それゆえ、本条文のこの犯罪を含むことの適切さを確認した。

(4) 第17条に列挙されるジェノサイド罪の定義は、二つの重要な要件(すなわち、必要な意図及び禁止された行為)で構成される。それらの二つの要件は、特に「ジェノサイド罪は…を意図して行われた次の行為を意味する」ということが、第17条冒頭に規定される。定義の第一の要件は、第17条の条項の最初に規定されるのに対して、第二の要件はa項からe項に規定される。

(5) 最初の要件に関して、ジェノサイド罪の定義は、国際法上のこの特別な犯罪の性質を区別する特別な意図が必要とされる。a項からe項に列挙される禁止行為は、個人が、通常ある帰結を結果として起こることを認識することなく行うことができない、とても自然な認識、意図、意志的行為である。通常、偶発的もしくは単なる怠慢の結果としてさえ起こらない行為の類型である。しかし、直接の被害者に対するそのような行為の起こりうる帰結の一般的認識を伴う列挙された行為の一つを行うことの一般的意図では、ジェノサイド罪は十分でない。この犯罪の定義は禁止された行為の総合的な帰結に対する精神の特別な状態もしくは特別な意図を必要とする。第17条の条項の冒頭に示されるように、禁止された行為の一つが、「国籍・民族・人種もしくは宗教的集団(全体もしくは一部に対して)をそのような集団として、破壊することを意図して行われた」場合にのみ、個人はジェノサイド罪の責任を負う。

(6) ジェノサイド罪に必要とされる意図には、いくらかの重要な側面がある。第一は、意図は集団の破壊することでなければならなく、特定集団の単に偶然一致した複数構成員の破壊ではない。禁止された行為は、特定集団の地位であるがために、且つ、集団を破壊する総合的目的の段階的ステップとして、個人に対して行われなければならない。それは、ジェノサイド罪の直接的被害者を決定する決定的基準である個人の識別よりも、特定集団中の個人の地位であるということである。集団自体が、大規模の犯罪行為のこの類型の最終的対象もしくは意図される被害者である(注120)。集団の個別的構成員に対してとられる行為は、集団に対する最終的目的を達成するために使われる手段である。

(7) 第二は、意図が集団を「そのような集団」(分離及び区別される実体を意味する)として、破壊することでなければならなく、単に、特定集団の地位であるいくらかの個人の破壊ではない。これに関して、国連総会は決議96(1)で、ジェノサイド罪と殺人を「全人類の集団の存在権の否定」としてのジェノサイドと「人間個人の生存権の否定」としての殺人として区別した。

(8) 第3は、意図が集団の「全体もしくは一部」を破壊することでなければならない。それは全地球上から、完全な全滅を達成することを意図するものである必要はない。それでもなお、明白な性格によるジェノサイド罪は、特定集団の少なくとも実質的な一部を破壊する意図を必要とする。

(9) 第四は、意図が条約に規定された集団の類型(すなわち、国籍、民族、人種、宗教的集団)の一つを破壊することでなければならない。政治的集団は、ニュルンベルク憲章に内包される迫害の定義中に含まれるが、ジェノサイド罪に内包されるジェノサイドの定義中では、含まれない。それは、集団の追啓が、後の犯罪の目的として十分に安定しているとは考えられなかったからである。それでもなお、政治的集団の構成員に対する直接的な迫害は第18条e項に規定される人道に対する罪を構成するだろう。人種及宗教的集団は、ニュルンベルク憲章及びジェノサイド条約により保護される。加えて、ジェノサイド条約は、国籍及び民族的集団をも保護する。第17条はジェノサイド条約で保護される集団と同等の分類を規定してしている。ジェノサイド条約で使われる「民族的(ethnical)」の用語は、規約の実体にいかなる影響を与えることなく、現代英語の語法を反映して、第17条では「民族的(ethnic)」の用語により置き換えられている。さらには、委員会は、部族集団に対して必要な意図を持って行われた場合には、本条が禁止された行為を対象とするとの見方をとる。

(10) 第5条に対するコメンタリーによると、本条文により対象とされる犯罪は、高官公人もしくは軍の指導者(それらに従属する物も同様)の一部に関するいくらかの類型をしばしば必要とする重大な犯罪である。実際、ジェノサイド条約は、第4条で明示的に、ジェノサイド罪が、立法上、責任ある統治者、公人もしくは私人により行われることを規定している。ジェノサイド罪の定義は、必要な意図を持って禁止される行為を行ったいかなる個人にも等しく適用される。ジェノサイド罪を実行する計画もしくは政策の詳細な認識の範囲は、政府の階級や軍隊の構造の中での実行者の立場により変わるだろう。これは、全ての計画もしくは政策に関して、上官と同程度に所有していないために、計画もしくは際策を実際に実行する従属者が、単にジェノサイド罪の責任を負わないことを意味しない。ジェノサイド罪の定義は、ジェノサイドの包括的計画もしくは政策の詳細の認識よりも、犯罪行為の最終的目的を認識している程度のことを要求している。従属者は、特定集団に所属する故人に対して禁止された行為を行う命令を受けた場合に、上官の意図を知ることが推測される。もし、特定集団の地位にあるがために選ばれた被害者に対して、破壊的行為を行うことの命令を実行した場合、ジェノサイドの包括的な計画もしくは政策の全ての側面に関与していないとの請求により、責任を逃れることはできない。法は、明らかな物を無視することにより、個人が刑事責任から保護されることを許すものではない。例えば、家から家へと行き、特定集団の構成員だけを殺すことを命じられた兵士は、被害者同一性の不適切さ及び特定集団の構成員の重大性に気づかないことはない。彼は、その集団自身に対する刑事行為の破壊的行為に気づかないことはない。さらに、認識と意図の要求される程度は、特定集団に所属し、それゆえ、大規模な刑事行為の直接的被害者として選ばれる個人に対する禁止された破壊行為を行う命令の性格から推測される程度である。

(11) ジェノサイドの定義の第二要件によると、本条はa項からe項に、ジェノサイド条約2条に含まれる禁止行為が規定される。1954年の草案は、ジェノサイドを構成する行為の網羅的列挙よりも例証を示すため、第2条10項に含まれる用語が使われるのに対し、委員会は、第17条に含まれる禁止された行為の列挙は自然に網羅的列挙を示すため、ジェノサイド条約第2条の用語を使用することに決定した。委員会は、国際社会により、広く受け入れられた文書と同様にする必要性に重視するその決議に賛成することを決定した。

(12) ジェノサイドの条約の起草作業により、明らかに示されるため、問題の破壊は身体的もしくは生物学的意味(特定集団の国籍、言語、宗教、文化もしくはその他のアイデンティティーではない)での集団の物質的破壊である。国籍もしくは宗教的要件及び人種もしくは民族的要件は、破壊(物質的意味(身体的もしくは生物学的意味)においてのみ考慮される)の用語の定義中では考慮されない。事務総長により作成された1947年草案及びジェノサイドに関する特別委員会により作成された1948年草案が、集団の言語、宗教もしくは文化を破壊する意図で行われた計画的行為(日々の交際や学校で集団の言語の使用もしくは印刷及び出版の流通を禁止すること、もしくは、集団の図書館、博物館、学校、歴史的記念碑、礼拝の場もしくは他の文化的慣行及び目的の使用を破壊もしくは妨害すること)を、対象とする「文化的ジェノサイド」の規定を含むことは事実である。しかし、第六委員会により作成され、国連総会で採択されたジェノサイド条約の文書は、二つの草案に含まれる「文化的ジェノサイド」の概念は含まれず、単に「身体的」もしくは「生物学的」ジェノサイドの分類内から起こる行為を列挙した(注121)。本条文は最初の3段落で、「身体的ジェノサイド」を列挙し、後の2段落で「生物学的ジェノサイド」を列挙している。

(13) (a)項に関して、「集団の構成員を殺すこと」の表現は、ジェノサイド条約第2条(a)項から引用された(注122)。

(14) (b)項に関して、「集団の構成員に対して、重大な身体的もしくは精神的危害を加えること」の表現は、ジェノサイド条約第2条(b)項から引用された。この段落は個人を苦しめる二つの類型の危害(すなわち、物理的被害のいくらかの類型を伴う身体的危害、及び精神的機能の損傷のいくらかの類型を伴う精神的危害)を規定する。集団の構成員に対して与えられる身体的危害もしくは精神的危害は、全体もしくは一部を破壊の脅威ある物として重大な正確を持つものでなければならない。

(15) (c)項に関して、「故意に、全体もしくは一部の物理的破壊を生じさせる生活状況を課すこと」の表現は、ジェノサイド条約第2条(c)項から引用される(注123)。それは、強制移送が3項に含まれることを提起する。しかし、委員会は集団の全体もしくは一部を破壊する意図で実行された場合には、この項が対象とすると考えた。

(16) (d)項に関して、「集団内の出生を妨げることを意図した手段を課すこと」の表現は、ジェノサイド条約第2条(d)項から引用される(注124)。「手段を課すこと」の表現は、強制の要件の必要性を示すため、この段落で使われる(注125)。それゆえ、この規定は、社会政策の問題として、国家により支援される自発的な出生管理計画に適用されない。

(17) (e)項に関して、「集団の子供を強制的に他の手段に移すこと」の表現は、ジェノサイド条約第2条(e)項から引用される。子供の強制的移送は、集団の将来の生存力にとって特別に重大な帰結をもたらす。本条文は、大人の移送に適用されないが、ある状況ではこの類型の行為は第18条(g)項の人道に対する罪もしくは第20条(a)(iv)の戦争犯罪を構成する。そのうえ、特に、家族構成員の分離を伴う場合、集団の構成員の強制移送は、(c)項のジェノサイドをも構成する。

(18) 本条文は実行されているジェノサイド罪の目的で集団の破壊の最終的帰結を達成する必要のないことを明らかに示している。保護される集団の全体もしくは一部の破壊を成し遂げる明らかな意図で、本条文に列挙される行為の一つを行うだけで十分である。

(19) 委員会は、特別な事例で、本条文に含まれるジェノサイド罪の規定の適用を求められる裁判所が、伝統的もしくは慣習国際法として規則に含まれる他の関係規定を頼みとすることの必要性を発見したことを述べた。例えば、もし問題が、本条文に規定されるジェノサイド罪が平時に行われているかどうかとして起こっているのなら、裁判所は、この可能性を確認されるジェノサイド条約第1条にこの問題に対する権威的答えを見出すことができるだろう

(20) 委員会は、本条文がジェノサイド条約から引用されるという事実が、その法的手段の自立的性格に影響を及ぼす方法ではないことをも述べている。そのうえ、委員会は、「濃くあい法のI国家責任のいかなる問題に影響を与えない」ことを明らかに規定する本条文第4条に注意を引く。これはジェノサイド条約第9条に規定されるジェノサイドの国家責任に関するいかなる問題をも含むだろう。

ANNOTATIONS

115.国連総会決議96号(I)。

116.国連総会決議260号A(III);国連、条約集78巻277頁。

117.ジェノサイド条約に対する留保事件(1951)、勧告的意見、ICJレポート1951、12頁。

118.「ジェノサイドの主たる性格はその目的(行為が集団の破壊に足して向けられなければならない)である。集団は紺人で構成され、それゆえ、最新の分析中で、破壊的行為は個人に対してとられなければならない。しかし、それらの個人は、本質的に所属する集団の構成員としてだけでなく、重要である。」Nehemiah Robinson、ジェノサイド条約コメンタリー(1960)、58頁。

119.それでもなお、この段落に規定されるいくらかの行為はある事情(例えば、第18条(e)項もしくは(f)項の人道に対する罪、第19条(c)項(iv)の戦争犯罪)において、人類の平和と安全に対する罪を構成する。

120.「「殺す((a)項)」の行為は「殺人」よりの広く、フランス語の「assassinat」よりも多くを内包する「meurtre」の用語と同様なものとして選ばれた。」

121.「「破壊的」の用語は、そこに破壊の性格な意図示すために含まれる、例えば、生命のある状況の創設に関係する予謀…第2条の禁止から生じる「生命の状況」を前もって列挙することは不可能である。単独の最終援助の意図と見込みは、ジェノサイド罪が行われているか否かのいずれの分離した事例中にも決定することができる。(c)項から生じるジェノサイドの例では、それらの制限は集団の全体もしくは一部の破壊を意図して行われることを規定される人の集団を最低限の食料に状況に置くこと、最低限以下の必要とされる医療サービスを縮小すること、十分な生活設備を抑えること、などなど、があげられる。」Nehemiah Robinson、ジェノサイド条約コメンタリー(1960)60,63-64頁。

122.「課される手段は、不妊、男女を分離すること、結婚の禁止及び同等に制限する手段である及び同様の結果を生じるような伝統的な行動である必要はない。」Nehemiah Robinson、ジェノサイド条約コメンタリー(1960)64頁。

123.女性差別撤廃委員会は、強制的な不妊もしくは堕胎を、女性に対するいかなる形式の差別撤廃に関する条約の侵害として認識している。女性差別撤廃委員会の報告、国連総会第57期公式記録付録38号(A/47/38)、22段落。

124.「課される手段は、不妊、男女を分離すること、結婚の禁止及び同等に制限する手段である及び同様の結果を生じるような伝統的な行動である必要はない。」Nehemiah Robinson、ジェノサイド条約コメンタリー(1960)64頁。

125.女性差別撤廃委員会は、強制的な不妊もしくは堕胎を、女性に対するいかなる形式の差別撤廃に関する条約の侵害として認識している。女性差別撤廃委員会の報告、国連総会第57期公式記録付録38号(A/47/38)、22段落。


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