国家責任条文草案逐条解説第48条

第48条 被害国以外の国家による責任の追求

1.被害国以外のいかなる国家も、次の場合、第2項に従い、加害国の責任を追求する資格が与えられる。
(a)違反された義務が、その国家を含む国家集団に対して義務を負わせ、且つ、集団の共同利益保護のために創設された場合、又は
(b)違反された義務が、国際社会全体に対すて義務を負わせている場合。
2.前項により、責任を援用する資格が与えられたすべての国家は、責任ある国家から、次のことを、請求する。
(a)第30条に従い、国際義務違反の停止、及び、再発防止の確証及び保証、及び、
(b)前条までの規定に従い、違反された義務の被害国又は受益者の利益の賠償義務の履行。
3.第43・44・45条の被害国による責任の追求の要件は、第1項により追求する資格が与えられる国家による責任の追求にも適用する。

Commentary

(1) 第48条は、第42条に含まれる規則を補完する。共同利益で行動する被害国以外の国家による責任の追及について扱う。第48条の責任を追及する資格を与えられる国家は、被害を受けていることによる個別の資格でも、義務を課される国家集団の一員としてでもなく、国際社会全体の一員としてでもない。この区別は、第48条1項中の「被害国以外のいかなる国家にも」という文脈により強調される。

(2) 第48条は、「国家集団の共同利益や国際社会全体の利益を保護する特別な義務違反の事例では、第42条における被害国でない国家により責任は追及される」という考えに基づく。国際社会全体に対する義務に関して、国際裁判所は、特に、バルセロナ・トラクション事件の中で多く述べている(注762)。裁判所は、それらの権利の履行には「全ての国家が法的利益を有する」と述べているが、第48条は、同条が認める国家の排他的立場を控えている。例えば、それらを一律に利害国と規定することによってである。「法的利益」の用語は、第42条における被害国も法的利益を持つとして、第42条と第48条の区別を認めない。

(3) 第48条1項の構造に関しては、責任を追及する広い権利を乗じさせる義務のカテゴリーを定義する。2項は、被害国以外の国家が請求する責任の形式を規定する。3項は、責任が、第48条1項で追及される事例に対し、第43、44、45条に含まれる追及の要件を適用する。

(4) 1項は「被害国以外のいかなる国家にも」と規定する。必然的に、全てもしくは多くの国家に第48条の責任を追及する資格が与えられる。そして、「いかなる国家」の用語は、それらの国家が一緒に、もしくは共同で行動しなければならない、といういかなる規定をも避けることを意図する。さらに、それらの資格は、国家が、第48条の適用される義務違反から個別的被害を受けている事例中の、同じ国際違法行為に関係するいかなる被害国の資格と、同時に生じる。

(5) 1項は、国家責任を追及する被害国以外の国家に、資格を与える義務違反のカテゴリーを定義する。国家集団に科される義務と集団の共同利益保護のために確立される義務(1項(a))、及び、国際社会全体に対して負う義務(1項(b))、の間の区別が規定される(注763)。

(6) 1項(a)上、被害国以外の国家は、次の二つの要件を満たすとき、責任を追及できる。一つ目は、責任の生じる義務違反が、責任を追及する国家の所属する集団に対して負っている。二つ目は、その義務が、共同利益保護のために確立されたものである。この規定は、国際法の法源の違いでは区別されず、集団の共同利益を保護する義務は、多国間条約もしくは慣習国際法を導き出す。そのような義務は、時々、「強行規範(erga omnes)上の義務」として規定される。

(7) 1項(a)中から由来する義務は、共同義務でなければならない。例えば、国家集団間で適用され、いくらかの共同利益中に確立されていなければならない(注764)。それは、例えば地域の環境や安全(地域的不核地帯条約もしくは人権保護の地域的システム)に関するものかもしれない。当事国の利益のためだけに確立された協定に制限されず、広い共通利益のための国家集団により確立された協定に拡大するだろう(注765)。しかし、いかなる事例でも、協定は二国間関係の領分を越えていなければならない。問題の義務が、共同利益を保護するという要件に関する限りでは、1項(a)はそのような利益の一覧を規定する条文の機能を果たすものではない。もし、義務が1項(a)内に含まれるのなら、それらの主要な目的は、個別的に関係する国家の全ての利益に加えて、共通利益を促進することだろう。これは、集団や個人の保護の一般的基準の設定を試みる国家が、非国家集団を保護する義務を想定している状況をも含むだろう(注766)。

(8) 1項(b)上、被害国以外の国家は、問題の義務が国際社会全体に対して課されている場合に、責任を追及できる(注767)。規定は、バルセロナ・トラクション事件の国際裁判所の判決に対する影響を与えることを意図する。同事件では、負う義務の本質的区別を述べた(注768)。後者に関して、裁判所は、続けて「追求される権利の重大性から見て、全ての国家が、それらの保護に法的利益を有し、それらは強行規範(erga omnes)の義務である」と述べている。

(9) この判決の本質を取り上げるとはいえ、本条は国際社会全体の裁判所の言及より少ない情報を伝達し、且つ、時々、全ての条約当事国に対する義務と混同されている「強行規範(erga omnes)の義務」の用語の使用は避けている。現存する国際法上、国際社会全体に対して負う義務を列挙する条文の機能もない。これは、国家責任の二次的規則を成文化する任務を逸脱し、且つ、いかなる事例においても、そのような一覧は制限的価値しか持たないだろう。それは、その概念の範囲は必然的に時とともに発展するだろうからである。裁判所自身も、有益な指標を示している。1970年の判決の中で、例として「侵略行為及びジェノサイド行為の禁止、基本的人権に関する原則及び規則(奴隷や人種差別からの保護を含む)」と述べている(注769)。東ティモール事件の判決の中では、裁判所はこのリストに民族自決権を加えている(注770)。

(10) どの国家も、国際社会全体の一員として、そのような義務違反を行う他国の責任を追及する資格が与えられる。1項(a)で守られる集団的義務のカテゴリーが、追加的基準の挿入により更なる性格付けが必要となるのに対し、1項(b)の場合はそのような性格付けは必要ない。全ての国家は、国際社会全体の一員としての定義により、且つ、問題の義務は、国際社会全体の利益を保護する共同利益としての定義による。もちろん、そのような義務は、同時に、侵略行為の禁止が国家の存続及び人々の安全を保護するものとして、国家の個別的利益も保護する。同様に、個別的国家は、特に、そのような義務違反に影響を受ける。例えば、共同利益の海洋汚染の保護を意図する義務に違反する汚染により特に影響を受ける沿岸国。

(11) 第2項は国家が第48条の責任を追及するときに行う請求のカテゴリーを詳細に述べる。第2項にあげられるものは網羅的であり、第48条上の責任の追及が、第42条の被害国の権利の範囲と比較して、より制限的に生じる。特に、第48条の国家(自身の権利の被害を受けていない国家で、それゆえ、賠償を請求できない国家)による行動の焦点は、国家が義務違反であるか、及び、違反が継続しているなら停止する、という問題である。たとえば、ウィンブルドン号事件の中で、特に航海上に経済的利益のない日本は、宣言だけを求めた。本来、フランスの国民が損害を負わなければならず、フランスが求め、且つ、損害を認められるのにである(注771)。南西アフリカ事件では、エチオピアとリベリアは法的立場の宣言だけを求めた(注772)。1971年の裁判所の指摘によると、「被害を受けた実体」は人(たとえば、南西アフリカの人々)であるとした(注773)。

(12) 2項(a)上、第48条に規定されるいかなる国家も、違法行為の停止を求める資格が与えられ、事情が第30条の再発防止の補償を必要とするなら保障も要求する資格が与えられる。加えて、2項(b)はそのような国家に、責任ある国家から第2部2章の規定に従い、賠償を求めることを許す。第48条の義務違反の事例では、違反による個別的被害を受けた国家が存在しない状態であり、現に、いくらかの国家が賠償(特に原状回復)を請求する立場にあることが高く望まれる。第2項(b)に従い、そのような請求は違反された義務の被害国もしくは、いるなら受益者の利益から行われなければならない。第48条2項のこの側面は漸進的な発展の手段を伴う。漸進的発展は、社会や利害関係のある集団利益を保護する手段を規定するために、正当化される。この文脈上、ある規定(例えば、諸人権条約)は全当事国に責任の追及を許すことを意味する。それらが提起している事例では、明らかな区別は、その問題から生じる原告適格及びその義務の受益者の利益から見出される(注774)。それゆえ、第48条の責任を追及し、且つ、宣言的法的救済と停止以外何も求めない国家は、被害をうけた当事者の利益の範囲内で行動することが要求される。被害を受けた当事国が国家である場合には、その政府は権威的にその利益を申し立てることができる。その他の場合は、この条では解決できない大きな問題を提起する(注775)、2項(b)は一般的原則から見出されるにすぎない。

(13) 2項(b)は、国家が「前述の条文に従い、賠償義務の履行」を請求することについて規定する。これは、被害国が請求できない状況において、第48条の国家が賠償を要求できないことは明らかである。例えば、停止の請求が、違法行為の継続を前提とする場合や、原状回復が不可能である場合には賠償の請求が排除される。

(14) 3項は、被害国による追求を支配する状況に対して、被害国以外の国家による、国家責任の追及を主題とする(特に、第43条「請求の通知」・第44条「請求の許容性」・第45条「責任を追及する権利の喪失」)。それらの条文は、第48条の責任を追及する国家に対して、準用して、等しく適用可能なものとして読まれる。

Footnote

762 「バルセロナ・トラクション(電力株式会社)事件(第2段階)」『I.C.J.レポート1970』32頁33段落。

763 国際社会全体に対する義務の重大な違反の責任の範囲は、第2部3章とコメンタリーを参照。

764 第42条のコメンタリー11段落も見よ。

765 「ウィンブルドン号事件」では、裁判所は「国際体制の確立により、Balticに容易に出入り可能とし、且つ、結果として運河を維持するベルサイユ条約の起草者の意図は、全ての種の外国船に対し、常時、開放する(『1928P.C.I.J.シリーズA第1巻』23頁)」と述べている。

766 委任システムを確立する国際連合憲章第22条は、同条に従い締結された委任協定であったという意味で、一般的利益の規定であった。しかし、第48条の慎重な出発点である「南西アフリカ事件(第2段階)」(『I.C.J.レポート1966』6頁)における、多くの批判がなされた国際裁判所の判決。

767 「国際社会全体」の用語は、第25条のコメンタリー18段落を見よ。

768 「バルセロナ・トラクション(電力株式会社)事件(第2段階)」『I.C.J.レポート1970』32頁33段落、及び第2部3章のコメンタリーを見よ。

769 前掲32頁34段落。

770 『I.C.J.レポート1995』102頁29段落。

771 『1928P.C.I.J.シリーズA第1巻』30頁。

772 「南アフリカ事件(先決的抗弁)」『I.C.J.レポート1962』319頁;「南アフリカ事件(第2段階)」『I.C.J.レポート1966』6頁。

773 「安保理決議276にもかかわらず、ナミビア(南西アフリカ)における南アフリカの継続的駐留の声明に対する法的効果」『I.C.J.レポート1971』56頁127段落。

774 「デンマーク対ターキー」(2000年4月5日判決)(『友好的解決』20,23段落)の欧州人権裁判所の勧告的意見を見よ。

775 第33条のコメンタリー3,4段落を見よ。


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