国際開発協力と自衛隊派兵

はじめに
自衛隊派遣
今自衛隊を派遣すべきか
自衛隊でなければならないか
考察

はじめに

2003年8月1日「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」が成立し、12月9日「イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画」が閣議決定された。しかし、2003年のイラクでの米兵死者は478人、5月1日のブッシュ米大統領による大規模な戦闘の終結宣言後には、米兵の死者数が340人(うち敵対行為で212人が死亡)にのぼり [1] 、必ずしも非戦闘地域は言い切れない状況が続いている中での、12月26日の航空自衛隊の先遣隊第一陣出発 [2] 、1月9日には陸上自衛隊先遣隊及び航空自衛隊本隊の出国が命じられた [3]

私は、本稿の中で、自衛隊自体の合法性・違法性を論ずるつもりはないが、自衛隊を派遣するとはどういうことか、今自衛隊を派遣すべきか、又、自衛隊でなければならないかということを、多面的に引用しながら検討し、最後に、自分なりの考察を加えたい。

自衛隊派遣

自衛隊を派遣するとはどういうことか。これは、武器の携帯等が認められていることを考えれば、諸外国にしてみれば、「日本国の軍隊が派兵」されるという解釈がなされて当然であるだろう。自衛隊に交戦権は無く、自衛のためにしか武器の使用が認められないという規定があったとしても、やはり「日本国軍隊」であることには変わりないのである。まして、今回のイラク派遣に関しては、国連安保理決議に基づくPKOとは異なっている(イラクに関する安保理決議では、国連憲章第7章に従い行動することを繰り返し述べてはいる)。この点に関して、2004年1月8日中国の外務次官は「最近の日本の安全保障、軍事面での動向について中国でも報道が多い。アジア諸国の関心も高い。(国連の決議がない中での派遣は)これまでの日本の考え方と違う部分があるので、周辺国、アジアの国々に十分説明をしてほしい。 [4] 」との注文がつけられているほどなのある。

今自衛隊を派遣すべきか

イラク特措法の法律案の提出理由として、

「イラク特別事態を受けて、国家の速やかな再建を図るために行われているイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取組に関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うこととし、もってイラクの国家の再建を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することとする必要がある。 [5]

とされている。

「我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資する」と、国連憲章を想起される文言によって規定し、また、12月9日の基本計画の閣議決定に伴う小泉内閣総理大臣記者会見の中で、憲法の前文を引用した上で、「まさに日本国として、日本国民として、この憲法の理念に沿った活動が国際社会から求められている [6] 」と強調し、国民への理解を求めている。

イラク特措法の第2条2項では、対応措置について、

「・・現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。

一 外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。ただし、イラクにあっては、国際連合安全保障理事会決議第千四百八十三号その他の政令で定める国際連合の総会又は安全保障理事会の決議に従ってイラクにおいて施政を行う機関の同意によることができる。) [7]

と規定されたのだが、一番問題とされているのは「戦闘行為」の文言解釈に関してであるだろう。

規定では、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」という定義を与えている。イラク全域が非戦闘地域では無いことは、小泉首相も認めているが、では、どのような基準で非戦闘地域を決定しているのか。設定された非戦闘地域において、偶発的なものも含め、必ずしも応戦的戦闘及び自爆テロが起こらないとは限らないのである。この点について、先遣隊の派遣によって、ある程度の安全が確保されていると考えられる場合には、非戦闘地域と設定した上で、不可効力的に応戦的戦闘及び自爆テロが起こった場合には、小泉首相の言うところの「必ずしも安全ではないところ」、つまりは、非戦闘地域ではあるのだが、治安の良くない地域という解釈なのだろうか。非常に難解な問題であるといえるし、議論の起こる点でもあるといえる。

この文言解釈に関連して、久米宏が「イラク国民による民主的政府への権限委譲が2004年6月に前倒しされる予定になっていることから、権限が委譲されたあとに、新政府によって要請されてからの自衛隊派遣でも遅くないのではないか。その方が理解も得易いのではないか。 [8] 」と発言していた事が記憶に残る。

自衛隊でなければならないか

日本経済新聞社が2003年12月18―21日に実施した全国世論調査では、自衛隊のイラク派遣に関しては、反対が52%で、賛成の33%を上回った [9] 。このような世論調査の結果の中でも、小泉首相はあくまでも、自衛隊の派遣を断行するようである。

久米宏は、「自衛隊ではなくても、NGO団体が幅広く活動しており、金銭的なものも含めてNGOを積極的に支援していく形でもよいのではないか。NGOは以前から積極的に活動しており、さらに、同じことをやらせるにしても、NGOの方がはるかに安くもできるのであり、自衛隊派遣を急ぐより、現存のNGOやその他民間の自発的な支援活動を活用する方がよっぽど良いのではないか [10] 」との考え方を示していた。

しかし、小泉首相の自衛隊派遣への考えは、「全く安全だということはない」地域であること、「人的な支援策を考えるのなら、自己完結性を持った組織である自衛隊が復興支援にあたるのが妥当だ [11] 」という言葉に集約されているのだろう。

考察

まず、示しておくべきなのは、私の基本的な現在の立場である。私は、小泉政権支持、日本の人道的支援への参加支持、小泉首相の自衛隊派遣の決断に支持の立場である。

自衛隊派遣反対論者の中には、「元々のイラク戦争の開始理由であった大量兵器が見つからず、その説明責任を果たせないアメリカに追従する形での自衛隊派遣は、大義名分が存在しない」などという主張をする人がいるが、その問題と、復興のための人道的支援とは、別問題であると考える。グローバル化が進み、緊密化した国際社会では、実際に起きてしまった戦争の後片付けには、国際社会の一員として、さらにはお金や人材を出せる先進国として、ある意味では義務ではないかと考える。

また、日本の自衛隊の場合、こういう言い方をすると批判があるだろうが、結局、日本を国家の安全保障として守っているのは、在日米軍であり、自衛隊は遊休資源であるという見方もあるのは事実である。もちろん、自衛官の安全面の保障が問題にもなるが、人道的支援に対して、自衛隊の有効活用という意味でも有意義なものがあるのではないだろうか。その意味では、2004年1月8日石破茂防衛庁長官が「『今回の派遣が成功すれば、国際社会の平和維持や世界で困っている人を助ける活動が、自衛隊の主要な活動になる可能性がある』と述べ、国際貢献活動を『雑則』と規定している現行の自衛隊法を改正して『主任務』に格上げする意向を示した。 [12] 」というのは非常に興味深い。

但し、今回のイラク戦争に対して、小泉首相は、一貫した積極的な姿勢を示しているが、湾岸戦争時にも皮肉られた「金は出すが、人出さず」というフレーズを、執拗なまでに意識し、「主体的かつ積極的に寄与」しようとしているようにも感じられる節がある。私は、小泉首相の決断力に支持を示す(今の日本には、このような決断力を持ったリーダーが必要だという理由もある)が、時に意固地になっているように感じるときもあるので、柔軟に対応していただきたい部分も隠せない [13]

しかし、国際社会の信任を得られる限りにおいては、今回のような積極的な支援活動はもっと行っていくべきだと考える。



[1] <http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt57/20040102AS2M0200D02012004.html>.

[2] <http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt69/20031225AS1E2500G25122003.html>.

[3] <http://www.jda.go.jp/j/news/2004/01/09b.htm>.

[4] <http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040108-00000158-kyodo-pol>.

[5] <http://www.kantei.go.jp/jp/houan/2003/iraq/030613iraq.html>.

[6] <http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2003/12/09press.html>.

[7] <http://www.kantei.go.jp/jp/houan/2003/iraq/030613iraq.html>.

[8] 2003年12月9日テレビ朝日「ニュースステーション」

[9] <http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt22/20031221AS1E2100D21122003.html>.

[10] 2003年12月??日(Peace Winds Japan大西健丞代表が出演した回)テレビ朝日「ニュースステーション」

[11] <http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt69/20040105AS1E0500105012004.html>.

[12] <http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt69/20040108AS1E0800D08012004.html>.

[13] 靖国神社参拝の問題もそうであるが、政を行うのは感情のある人間である。内政不干渉がどうのこうのと言うよりも、意地になって参拝を継続することと、今までの友好関係を崩す可能性を比較均衡した上で、どちらに重きをおくか良く考えていただきたいと考える。

history of update
ver.1.10 2004.12.12 opened to the public.
ver.1.00 2004.01.13 made for a report of the International Cooperation Theory.


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