オフショア金融センター

 オフショア(Offshore)とは沖合を意味するが、原義を拡大して「海外」の意味に使うことがある。オフショア金融センターは、非居住者が資金調達・運用などの資金取引を自由に行える金融機関であり、タックス・ヘブンであることが多い。タックス・ヘヴン(Tax Haven)とは税金(Tax)からの避難地(Haven)の事であり、つまり全く税金が存在しないか、または極めて税率が低い国・地域を意味する。

世界の金融センター

シンガポール

 シンガポール政府は1965年のマレーシアからの分離・独立以来、国際金融センター化構想を経済発展の基本戦略の一つとしており、まず68年のオフショア市場としてのアジアダラー市場、84年に先物 [1] ・オプション[2] などのデリバティブ商品 [3] の取引所としてシンガポール国際金融(SIMEX)を創設するなどの育成策を行ってきた。

 かつては、「調達のシンガポール、運用の香港」と呼ばれ、資金調達はオフショア預金金利が非課税のシンガポール、資金運用は法人税率が低く、海外で発生したオフショア所得が原則非課税の香港といった傾向があったが、シンガポールの法人税引き下げ、香港の非居住者外貨預金の源泉税撤廃などにより、現在、制度的な相違はほとんど見られない。しかし、外国為替や先物取引は、いまだ、シンガポールのほうが盛んで、地域的にはASEANを中心に展開している。

香港

 73年の為替管理規制撤廃など、香港政庁の自由本人主義を背景に、元来、自由貿易として貿易金融が盛んだったことが、金融センターという自然発生的な発展につながった。現在、株式市場の規模やシンジケートローン [4] 実績では、香港がシンガポールに差をつけている。また、地域的には中国を中心にしており、シンガポールとの棲み分けができている。

アイルランド

 ダブリン国際金融サービスセンター(IFSC)は、アイルランド政府が国内経済発展と雇用確保のため、主とダブリンの造船所跡地再開発事業として1987年に設立した。そして、情報通信のインフラ整備や各種優遇措置の制定により、世界各国から金融機関を中心に多くの企業を集めた。これまでに約1000社の事業を認可し、現地法人の設立は500社を超え、これらの企業進出により、国際金融サービスセンター地区だけで、約4500人の雇用を生み出している。また、1987年には210億7400万アイルランドボンドだったGDPは、1998年には、596億3700万アイルランドポンドに急増している。

進出企業に対する主な優遇措置

 ただし、優遇税制は経済協力開発機構(OECD)による問題の指摘もあり、10%の軽減税率と24%の標準税率を段階的に歩み寄せ2003年には12.5%へ一本化する方向である。

その他の金融センター

 1990年代、マレーシア及びタイがオフショア市場を設立するなど、アジア諸国は自前の金融センターの育成に着手してきた。しかし、97年のアジア金融危機以降は、自由化・国際化の速度を減速させる傾向が強い。国際金融センターを目指している上海も、金融インフラの整備がハード・ソフトともに遅れ、当面は、中国国内の金融センターにとどまるものと見られている。

 このような中で、シンガポールと香港はアジア諸国と比較しても相対的に健全な金融システムを維持しており、アジアの国際金融センターとしての地位が揺らぐ可能性は中期的に見ても低いと予想される。しかし、両者とも国内市場の拡大はさほど見込めないだけに、国際金融センターとしての発展基盤を、アジア・太平洋地域に求めざるを得ないという構図は今後も変わらないであろう。

沖縄金融センター

 現在、日本には、東京オフショア市場以外に、沖縄県名護市に金融センターが導入されている。名護市が米軍普天間基地の異説受け入れの見返りとして政府に要望していたもので、2002年1月25日に、政府の沖縄政策協議会で了承された。

 その金融センターの優遇税制は、名護市に新設する企業は、法人税を今後10年間26%(通常41%)に軽減する。しかし、対象となる企業には制約があり、しかも、香港の法人税14%に比べると、いくら国内より低いといっても他の金融特区と比較すると高いといえる。そのため、香港をはじめとするその他の金融特区と比較すると、十分な経済効果を期待できないとも考えられる。

 ただ、日本が金融センターを設立した場合、地理的に香港・シンガポールとの共存は可能であり、両者との決定的違いは、香港・シンガポールに比べて国内市場が広く、また、何より国内に高い貯蓄金を有していることだといえる。そのため、日本において、国際金融センター設立の需要は見込まれるといえるだろう。

主なタックス・ヘヴンの国・地域

ヨーロッパ

  • ハンガリー (Hungary)
  • オーストリア (Austria)
  • リヒテンシュタイン (Liechtenstein)
  • スイス (Switzerland)
  • 伊領カンピオーネ (Campione d'Italia)
  • モナコ (Monaco)
  • オランダ (The Netherlands)
  • ルクセンブルグ (Luxembourg)
  • アイルランド (Ireland)
  • マン島 (Isle of Man)
  • ジャージー島 (Jersey)
  • ガーンジー島 (Guernsey)
  • サーク島 (Sark)
  • オールダニー島 (Alderney)
  • アンドラ (Andorra)
  • ジブラルタル (Gibraltar)
  • マルタ (Malta)
  • キプロス (Cyprus)
  • マデイラ (Madeira)

カリブ海域

  • バミューダ島 (Bermuda)
  • バハマ諸島 (Bahamas)
  • ケイマン諸島 (Caymans)
  • タークス・カイコス (Turks & Caicos)
  • 英領バージン諸島 (British Virgin Islands)
  • 英領アンギラ島 (Anguilla)
  • セント・キッツ・ネヴィス (St. Kitts & Nevis)
  • バーブーダ (Barbuda)
  • 英領モンセラート (Montserrat)
  • セント・ヴィンセント (St. Vincent)
  • バルバドス (Barbados)
  • グレナダ (Grenada)
  • 蘭領アンティル諸島 (Netherlands Antilles)
  • 蘭領アルバ島 (Aruba)

中南米

  • ベリーズ (Belize)
  • コスタリカ (Costa Rica)
  • パナマ (Panama)
  • ウルグアイ (Uruguay)

北米

  • デラウェアー (Delaware)
  • ユタ (Utah)
  • ワイオミング (Wyoming)
  • ネヴァダ (Nevada)

アジア・太平洋

  • ホンコン (Hong Kong)
  • シンガポール (Singapore)
  • ラブアン島 (Labuan)
  • パラオ諸島 (Palau Islands)
  • トラック諸島 (Truk Islands)
  • マーシャル諸島 (Marshall Islands)
  • ナウル (Nauru)
  • ヴァヌアツ (Vanuatu)
  • 西サモア (Western Samoa)
  • クック諸島 (Cook Islands)

インド洋・アフリカ沖/大陸

  • スリランカ (Sri Lanka)
  • バーレーン (Bahrain)
  • セイシェル諸島 (Seychelles)
  • モーリシャス (Mauritius)
  • リベリア (Liberia)

参考文献


[1] 代金の支払いに対する代金の引渡しが将来行われる取引。

[2] 通貨や債権、株式などの取引を、将来のある特定日にあらかじめ決めた条件で行使できる権利のこと。

[3] 金融派生商品のこと。株式・債権・金利・為替など本源的資産から派生した証券のこと。

[4] 国際的な銀行のシンジケート(国際協調融資団)が行う中長期的融資のこと。

[5] 資本利得(資産の購入時と売却時の差益による利得)にかかる税金のこと。

history of update
ver.1.10 2004.01.11 added table of contents.
ver.1.02 2003.12.17 corrected the errors.
ver.1.00 2003.11.27 opened to the public.


今日: 昨日:
since 2008.09.13